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「――ふふ。では私はこれで」
グレンの慌てた様子に笑みを溢し、会話が途切れたのを皮切りに少女は颯爽と歩き去る。
少女の姿は暫くすると雑踏の中に埋もれ、直ぐに見えなくなった。
未だに胸の内に残っていた微かな動揺と緊張が薄まり、耳が再び【楽団】の演奏を脳へと伝達する。
「――綺麗だったけど、何となく軍人っぽい感じの子だったな」
少女か歩み去って行った方向に視線を向け、グレンは先程抱いた印象を何気無く呟く。
そして少女の歩き去った方角を見詰める事、数秒後。
『――主よ、ギルドへ行くのでは無かったのか?』
どこか呆れた、そして微かに笑い混じりの声音が耳では無く頭に直接響く。
グレンはその声の発生源である、己の腰に下げた刀を忌々しそうに睨み付ける。
「っ……、はぁ。わかってるよ……」
何か言おうとするも、途中から諦めたように変化してしまった。
そしてどこかわざとらしく溜め息を吐き、改めて己の腰に下げた刀に視線を落とす。
サーバー内にまだ数える程しかない
AI搭載武器――通称・【AI武具】個有名【妖刀・色(しき)】。
この<MMORPG>の形態をとる仮想世界には様々な箇所に"AI"が搭載され、同時に管理されている。
システムやパラメーター、モンスターや街に住む住人、そして数は少ないがオブジェクトや武具に至るまで。
そしてそれらは全て、より高位の<AIヒエラルキー>の中でより厳密に管理されていた。
そもそもこの仮想の世界は<超高度解離サーバー>と呼ばれし世界中を網羅するインターネット回線上から独立した位置に存在する。
世界の全て――街や海、山や草原、国や生態系に至るまでもが、電子知能生命体が築き上げた。
本来の種の系統樹から異なる生命体。
幻想種とも呼べる様々な種が暮らす、もう一つの世界。
電子データ――通称【Code】に依って創造されし<異世界>。
グレンは取り留めの無い思考を切り替え、目的地であるギルドのホームへ歩き出す。
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