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傭兵ギルドとは所謂、戦闘に関わる何でも屋に近い商売だ。
モンスター討伐から世界各地に散りばめられたクエストの補助、素材や特殊なアイテムの収集――そして更には特殊なケースであるが"PK"を遂行する場合もある。
そんな傭兵ギルドに初めて依頼にくるプレイヤーの殆どは、目の前の建物をギルドホームだと思わず素通り、または見付からず諦めてしまう。
噂に依ると――周囲を歩いてる"NPC"達は、この傭兵ギルドのホームが何処なのかをよく聞かれるそうだ。
その為、周辺で暮らしているNPCの十体以上が、まるでこのギルド専用の<案内NPC>のように説明、更に道案内までも行っていると言う。
ギルドホームを増築して見映えを良くする事は可能だが――悲しいかな、そんなお金は存在しない。
単に貯金する気が無いアホなギルドマスターが、折角貯めた金貨を湯水のように使ってしまうのが原因だ。
そんな単純明快な理由から、創立当初から変わらない姿でギルドホームは市街地の一角に存在し続けている。
「――何だかんだ言っても、皆結構気に入ってるんだよな……俺自身もアットホームな感じが気に入ってるしな」
ふと溢れた自分自身の率直な感想に思わず口を緩める。
そしてグレンは、両開きの木製の扉を押し開きギルドの中に入って行った。
「――あ。ぉ、お帰りなさいませ……ご、ご主人様」
そしてそんなホームの中には、照れた表情を浮かべメイド服を着た――メイドさん(?)の見慣れぬ姿があった。
第1章【ギルド】fin.
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