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一振りは星造の剣。
星明かりの下で美しく映える剣の輝き。
黒地の刀身に走る美しい模様――それは神々の叡智を記録せし記号。
それは高き者から譲り受け、世界の意思が創り上げた幻想の刃。
闇ではなく、夜と言う透明な色彩に包まれた丘。
無数に浮かぶ煌めく星々。
そして錆び付いた歯車の下にわだかまる、別れの挨拶。
どんな現実であろうと、起きてしまった事は変えることは出来ない。
何者で在ろうとやり直す事は不可能。
痛む傷口よりも、激しく胸を苛む悲痛な悼み。
ただその事に――冥く――暗く――昏く――嘲う――嘲笑う――まるで泣くように――ワラウ。
世界を流転せし様々な事象の終焉――それは同時に、始まりを告げる福音。
終わりはいつも突然であり、いつもの当たり前のように甘受し続けた日常は――突然に、終わりを告げる。
気付いた時には既に、歯車は戻れない所まで廻っていた。
さて、それでは時間の針を巻き戻し、その間の話を語ろうか――両世界の骨子を捻じ曲げた、運命と言う化物の物語。
これは終わりを告げる、始まりの物語。
世界には、確かな痛みが存在した。
【プロローグ】fin.
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