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グレンの突然の叫び声を聞いてビクッと驚いた様子のサクラの脇を通り過ぎる。
そして奥の扉へツカツカと足音荒く歩いて行くと、真鍮製の取っ手を掴み乱暴に扉を開け放った。
するとグレンの視界に、銀色の髪を寝癖のように外に跳ねさせた髪型が映り込む。
その男性プレイヤーは目の端に涙を溜めていた。
その涙は明らかに笑いを堪えているのが原因であり、手は溢れそうになる呼気が漏れないように口を抑え、更に腹筋をもう片方の手で抑える変な人物、つまり変人がいた。
「何やってんですかっ!! マスター!!」
グレンが叫ぶと、【マスター】こと傭兵ギルドのギルドマスターである【ツキ】は指先で目尻の涙を拭う。
そして、やれやれといった感じで左右に首を振り、何故かもったいぶった様子で口を開き、目をカッと見開らく。
「フッフッフッ……何って……そうっ!!
僕は、ギルドマスターとしての仕事を遂行したまでさっ!!!」
ツキは腕を組み、フフンと自信満々のドヤ顔をして、朗々とホーム内に響き渡る音量で宣言する。
思わず感情が口から出てしまうほどのセリフと態度だったが、グレンは何とか自制心を発揮し、腰の得物を抜くことを堪える。
グレンの殺気にも似た怒気をどこ吹く風という顔で受け流し、ツキの口は休むことは無かった。
「それにしても、今回のは想像通り……いやっ!! 想像以上のクオリティだったねっ!!
サクラ君の可愛らしい姿を拝見できた事もそうだけど、何と言っても……【アノ】グレン君の顔を赤くして、照れてる姿を観ることが出来るなんてね――」
ツキは得意気に、右手の人差し指を左右に振る。
そしてニヤニヤと愉しくてしょうがないと言った様子で、更に言葉を続けた。
「いやはや……一粒で二度美味しいとはこの事だね。
まあ、サクラ君の可愛らしさがフリフリのメイド服によって強化され、そこで更に恥じらいながら――しかも笑顔で【ご、ご主人様……】とは反則だったかなぁぁぁ?」
ニヤリ、ニヤリと隠す気の無い笑みを端麗な顔に浮かべる。
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