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現在、目の前に展開されているものは現実世界では有り得ない光景。
古今東西の世界を代表する、最強の幻獣種。
神々に敵対し、人間を苦しめ暴虐の限りを尽くす怪物――モンスター。
その姿はまさしく、おとぎ話や漫画・小説の中で姿・形を変え登場する空想上の生物――【ドラゴン】。
狂暴かつ禍々しいほど凶悪な、食物連鎖の頂点に位置付けされる姿。
その姿は一目見ただけで、身体の奥底から原始的な恐怖を喚起する。
ギョロリと蠢く、金色の瞳。
後ろの方から、「ひっ!!」――と言う短い悲鳴。
そして後ずさるような、ブーツの底が地面を擦る硬質な音が響いた。
「GyaaaAAAzzzzzzzzzzZZ――――!!」
突如としての咆哮。
そしてその反響/残響が鳴り止まぬ内、爆発したかのような勢いで侵入者目掛け突撃を繰り出す。
ビリビリと洞窟内の空気を震わす音の波動。
迫り来る威圧感に男の後ろにいた四人の男女――今回の依頼主とその仲間が恐慌状態に陥る。
そしてそんな中、黒に近い灰色の髪をした青年が一人悠然と立っていた。
力みのない、だが踵(かかと)を微かに浮かせ即座に対応できるようにした隙のない立ち姿。
やや幼さの残るがそこそこ顔立ちが整った表情に、動揺や恐怖等の感情の揺れは微塵も有りはしない。
簡易な金属防具を纏ったその男は後ろに控え、更には身体を硬直させている依頼主の男に声を掛ける。
それはまるで、挨拶でもするかのような緊張感の感じられない、どこか暖かく柔らかな声。
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