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刀の口金(くちがね)が奏でた澄んだ音色が、美しい余韻を残しながら洞窟内に染み込む。
――――ボゥッッ!!
直ぐ様、何かが燃えるような音を聞こえてくる。
リザードドラゴンのその巨躯は、青白い焔に包まれてた。
どこかドロリとした、粘り気のある炎。
全身を余すとこ無く炎が包み込み、数秒後には微細なポリゴンの欠片となって爆散する。
飛び散った欠片が空洞の全域を淡く照らしながら、直ぐに跡形もなく溶け消えた。
青年の後方へと控えていたメンバー達は目の前の光景、そしてたった今起きた戦闘の衝撃に身体を硬直させていた。
青年は視界の右上に表示された"戦利品Box"――ボスモンスターであったリザードドラゴンのドロップアイテムを一瞥。
そして一刀の元で龍種を葬った青年は、惚けたように見つめてくる依頼主達へと向き直る。
青年が振り返っても依頼主とその仲間達は、ただ惚けたように――いや、若干だが呆れ混じりに見つめていた。
感嘆、瞠目、驚愕。
それは彼等の内心の狂騒を示す、無言の祝福にも捉えられる。
『あれ……? 何だこの反応……?』
『フム……確か今回の依頼主は、うちのギルドに依頼したのは初めてではなかったか――?』
低く落ち着き払った、その声を聴く者に果てしない年輪を重ねていること思わせる声音。
男の思考を読んだかのように、低く落ち着いた声が大気を震わす事なく、青年の頭の中に直接響き渡る。
『あぁ……なるほど、ね――』
青年もまた、声なき声で応えた。
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