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転移魔方陣にて青年が去っていった洞窟内。
そこは既に完全なる静けさを取り戻していながら、未だ驚愕なる感情が支配する空間であった。
そして未だに立ち竦むメンバー達が、身体を弛緩させるように息を吐くとおもむろに口を開き出して行く。
「驚きましたね……噂通り。いや――噂以上じゃないでしょうか?」
誰を指しての言葉かは言わずもがな。
仲間内の紅一点の言葉に、依頼主の男は頷き言葉を重ねる。
「ああ、そうだな……流石は傭兵ギルドと言われるだけはある」
知恵のある蛇――この<仮想世界>での幻獣種の中、その最高位に位置する龍種を一撃で屠ったその戦闘力。
例え龍種の中で下位種族であろうと、その強さは並みのモンスターを容易く凌駕する。
そしてその龍種の更に上をゆく青年の力。
それは正しく、この世界でもトップクラスに位置着けされている事に間違いは無いであろう。
トップクラスの住人の潜む領域とはつまり、仮想世界のボリュームゾーンを形成する常人達である彼等には、想像だにしなかった世界であり領域であった。
「しかも、あの【グレン】が来るとはな……」
未だに驚きを滲ませた声音。
今しがた譫言(うわごと)のような言葉に対し、その傍にいた別の男が首肯し口を開く。
「ええ、流石は――彼(か)の【妖刀使いのグレン】、ですかね…………」
それは憧憬を滲ませながら、微かな恐れをも匂わせていた。
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