プロローグ‐Re:Birth‐

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 HRに間に合った幸介がため息を吐いて席に着くやいなや、正芳はなんだか諸々ぐちぐちと呟いてきたが、幸介は安堵と呆れの入り混じったような溜め息を吐きながらそれらに適当に相槌を打って受け流す。 「おっす、朝のやつ始めるぞ」  正芳の言葉を話半分に受け流しながら、幸介がようやく教科書を机にしまい終えた頃、教室の扉が不意に開き、担任の新宮司が気の抜けたような挨拶と共に姿を現した。だぼだぼの茶色がかったスーツにぼさぼさの髪、無精髭をはやし、常に眠そうな目をした男新宮はだらしなく教卓に立ち、日誌を無造作に捲った。 「あー、今日は留学生の日だな」  担任の新宮司は髪の毛をかきながら「おい、良いぞ」とドアの向こうに促すと、ドアはゆっくりと開き、金髪の女生徒が姿を表した。 「まぁ、予想はしてたけどな」  湧き上がる男子の歓声の中で、幸介は一人ごちた。 「なになに、なにを予想したんだ?」  幸介の前に座っているため唯一聞こえていた正芳に尋ねられたが「なんでもねーよ」と鬱陶しく追い払い、幸介は再び教壇に目を向けた。今朝の女生徒は恭しく会釈をすると、チョークを手に筆記体でさらさらと自分の名前を書き、手に付いた粉を払うと、少しの沈黙を破り、口を開いた。
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