プロローグ‐Re:Birth‐

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       †  放課後の教室はがらんとしていた。あちらこちらで部活動に勤しむ生徒の声は聞こえるものの、室内から発せられる音は限りなく無音に近かった。幸介は何をするでもなく、ペンをくるくると回していた。  何よりも、今朝の事があってか、面と向かって対面してしまうのも気まずかった。 「今日の案内は学級委員長だって言ってたけど?」  均衡を破ったのはリーゼロッテだった。読んでいた本を置き、仏頂面の顔に相応な、刺々しい語気で言葉を紡ぐ。  幸介は彼女の声に乗せられた殺気のようなものに一瞬気圧されながらも、隣の机に座った。 「いわばその委員長の粋な計らいってやつだ」 「……何それ」 「今朝の〝アレ〟を見てたんだと」  リーゼロッテは「ふーん」と興味なさそうに呟き、再びパラパラと本を捲り始めた。幸介はよくもこう語りにくい状況を作るよな、と思うも、別段気にした様子もなく口を開く。 「で、行かないのか? 校内の案内」 「遠慮しとくわ。私どこに何があるかだいたい知ってるから」  今朝職員室を尋ねた口からよくもまぁそんな言葉が、と幸介は溜め息を吐き出した。リーゼロッテは本に目を落としながらも、その態度を機敏に際して「なによ」と幸介に問い質す。 「今朝俺に職員室の位置を尋ねたのにか?」  幸介は挑発するように言葉を紡ぎ出す。リーゼロッテを案じる気は多少なりともあるが、どうしてこう、気の強い女子というものには余計に触れたくなると言う、悪戯心の表れのようなものでもあった。
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