プロローグ‐Re:Birth‐

3/15
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「……いつもお前がチャンネルを奪うんだろうが」  あのな、と幸介は半ば呆れながらぼやく。日々の情報を朝のニュースを介して取り入れる兄としてはマスコミを鵜呑みにしない事を信条としている厨二病候補生の妹を嘆かわしく思っているのだ。情報の正確性云々の前に取捨選択を怠る時点で面倒くさいオーラが出ていることに当人は露ほども気が付いていないのだから質が悪い。 「だってニュースなんか見ても学校の話題に付いてけないじゃないですか」  伊織はテーブルの上のリモコンを素早く奪い去り、チャンネルを「激熱! プロレスチャンネル」へと変える。画面の奥で死闘を繰り広げる二人のレスラーを前に拳を握り締めたり声を荒げたりする愚妹に対して、幸介は「いやお前学校でどんな会話してんだよ!」と小一時間問いつめたい衝動にかられたが、敢えて突っ込むまいと、出かけた言葉を飲み込むのだった。  最近はご覧のありさまで、朝の貴重な時間も彼女によって蹂躙されつつある今、幸介は心の片隅で「新聞取るか」などと考えていた。伊織は社会の潮流について行く気は毛頭無いらしいし、と幸介は伊織をチラリと横目で見た。テレビの奥ではマイスター藤村とカイザー翔、二者の熱い戦いが終局に近づきつつあったが、幸介には正直興味の無いことだった。 「マイスターみたいなアマチュア神を新人ドリームマッチとかで使うなよな。ほら、圧倒的だよ」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!