プロローグ‐Re:Birth‐

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「……もう良いか? ニュースに戻すぞ」 「えー」  テレビの奥ではカイザー翔がマイスターのムーンサルトプレスを受け、白いキャンバスへ沈んでいた。周りの歓声も空しく、やがてゴングが鳴り響くと幸介は「ほらな」と呟き、渋る伊織をよそにリモコンに手を伸ばした。 『次は、為替と株価の値動きです――』 「……朝ご飯食べる」  伊織は文句を口にしながら、しぶしぶテーブルに着いた。幸介は溜め息を吐き出しながらテーブルに朝食を並べ、伊織の向かい側に座る。  片田舎から、所謂名門校といわれる学校へ進学した幸介は、現在妹の伊織と二人暮らしをしている訳だが、実家での休日を常にぐうたら過ごしていた伊織は家事スキルが存在せず、掃除や洗濯、炊事など諸々の家事は兄である幸介が担当している。  しかし学校では猫を被り、外面の良い伊織のせいで『不真面目な兄』という目で見られがちである。クラスメートもキャラ的にしっかりしていそうな伊織が家事を行っていると思って疑わないため、昼食時には「妹の手作り弁当」と揶揄される事も少なくない。  幸介は周りの評価を殆ど気に留めないが、内心では日々二人分の家事に疲れてたらあんなに明るく振る舞えないよな……等と思いつつもそれを口に出すことはしない。
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