プロローグ‐Re:Birth‐

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「ところで兄さん、確か今日は交換留学生が来る日でしたよね?」  伊織はテーブルの上の朝食を手早く掻き込み、いちご牛乳でそれらを喉の奥に流し込むと、一端箸を置いて幸介に尋ねる。幸介はそう言えば一昨日かそこらにそんな話を聞いたっけ、と興味なさげに頬を掻き、曖昧な返事をくれた。  交換留学生というのは、二人の学び舎である江嶺(こうりょう)学園の姉妹校にあたるドイツの学院から、毎回1年半程のスパンでもって留学生を迎える事を指している。ものぐさな教師が担任を持っている幸介のクラスは他のクラスと比べて情報量が圧倒的に少ない事で知られている。しかしながら昨日は何故か珍しく嬉々として交換留学生の情報を語り始めたものだから、どうにか頭の片隅程度には残っていたのだ。 「毎回ご苦労な事だよなぁ……」  俺なら絶対やだね、と幸介もトースト片手に朝食をつまみ始める。面倒な事くさがりな彼はどうもこういう〝意味のよく分からないイベント〟が好きになれないのだ。専門学校でない普通の学校にわざわざ大金を支払い、日本へ来て一体何を学ぶのかもよく分からないし、そもそも日本語が殆ど分からない状態で来られても、こちらは英語が公用語である圏内じゃないのだから、そこで自国での学費や諸々を棒に振ってこんな辺境の地での初等教育を受けさせられるなんて、屈辱以外の何物でもないと考えているからだ。
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