プロローグ‐Re:Birth‐

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 幸介は、大袈裟なジェスチャーで止めにかかる正芳を見て、半ば呆れ気味に「しょうがねぇな」と呟く。というのは、正芳の〝耳寄り情報〟は基本的に「何組の女子が可愛い」とかそういった類の話だからだ。  新入生の往来の最中でこんな男子トークを聞かされるのも、なんだか自分が正芳と同類に見られて嫌だし、何よりも可愛い子の情報を聞いたところでその女子とお近付きになれるわけでもなく、むしろその逆で、変態キャラとして引かれているように思える。ましてや自分や正芳の外見はお世辞にも良いとは言えない。 「此度の交換留学生は、可愛いらしいぞ!」  むしろ懲りずにこうして話を出来る正芳の頭は豆腐かなんかで出来ているんじゃなかろうか、と幸介は別の意味で感心しながらも、滔々と続けられる変態トーク話半分程度に聞き流していた。 「我々の調査では、今までの最高記録である葉山睦美を越えるスペックであると専らの噂が――っておい、待てよ!」 「ほら、もうすぐHR始まるだろ。話が長くなるなら、教室で聴いてやるよ」  幸介は面倒くさそうに頭を掻き、校舎の時計を指さした。時計はHRの時間のおよそ五分前を刻み、それを見た遅刻常習者である正芳は「うわやっべ」と鞄を担ぎ直して校舎を目指して駆け出し、あっという間に姿を消した。
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