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「……ま、あの時計は5分早いんだけどな」
静かになった校門前で、幸介は一人ごちる。腕時計に目を落とすと、時計はおよそ十分前を刻んでいた。これだけあれば、ゆっくり歩いても間に合うだろう、と幸介は歩き始めた。
――はずだった。
「……やっと見つけたわ」
歩き出そうとした幸介は、しかし何者かに襟首を掴まれ、動きを止めざるを得なくなった。しかし、掛けられた声には聞き覚えがなく、幸介は首だけ後ろを振り返る。そこに立っていたのは、知らない女生徒だった。
背丈は自分より若干低め、ウェーブの掛かった金髪は腰まで伸びている。瞳はカラーコンタクトレンズだろうか、西洋の人形のように澄んだ青をしていて、全体的に外国人のような雰囲気で、流暢な日本語がギャップを感じさせる。
「ねぇ、あんまりじろじろ見ないでくれるかしら」
「え、あぁごめん」
金髪女子は溜め息を吐きながら前髪をいじり、幸介を窘めた。幸介はびくりと肩を震わせ、一瞬戸惑いながらも我に返り、素直に詫びる。
「あの、不躾なんだけど、俺と君って面識あった?」
しかし、頭を下げた所で幸介はこんなコスプレイヤーのような生徒は、見たことがない事に気付く。学園は広しといえど、ここまで自由度の高い学生は初めて見るのではないか、と思う程だった。
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