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幸介は、自分が忘れている可能性もあるのか、と金髪女生徒に話しかけた。というのも例えばクラスメートがいきなりイメチェンした可能性も無いわけでもなかった(というか、万が一にもそんな事は無いが)とりあえず気まずい雰囲気を打破するべく尋ねたのである。
「そんなの、あるわけないじゃない」
案の定、金髪女子は刺々しい雰囲気で幸介を睨み付けた。幸介はあまりの眼力に「別にナンパとかそういうのじゃねーよな、コレ」とかそんなことを思ったが、ここで滔々と弁明を重ねても余計白々しいな、と思うことにした。
「いや、じゃあ、人違いなんじゃ――」
「違うわよ。だって、私が探してる『篠原幸介』っていうのはあなたの事よね」
そういって幸介は校舎へ急ごうとしたが、ふと足を止めた。見ず知らずの女子から自分の名前が出てくるとは露ほども思わなかったからだ。
つまり現状としては、全く面識のない相手が篠原幸介という名前を頼りに自分を探している、というよく分からない状況になる。ちなみに幸介は、とりわけ学校内で有名というわけでもなく、委員長やクラス委員等の重要職に就いたこともなければ、親も普通の会社員と主婦で、特に謎の機関がどうこうというわけでもないのだ。
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