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俺は犬である。
名前はまだない。
正確に言うなれば
人間に付けられた名前はない。
そう、俺はこの世に生まれ落ちた瞬間から野良犬だ。
俺を産んだ母犬も野良であったが、父犬はどこかで飼われていた犬であったらしい。
「らしい」と言うのは
俺の父犬は母犬に種付けをすると、そそくさと飼い主の元へ帰って行ったそうだ。
俺が若い頃は、いつか見つけ出し、喉元を食いちぎってやろうかと考えていたが、長い年月で憤怒の念は擦り切れ、今となっては憎しみの一つも湧かない。
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