あの日も、空は青かったんだ。

3/26
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
「いいじゃん。みんな優しくしてくれるんだしさー」  そういった彼女はいたってマイペースである。  彼は再びため息をつくと、頭を抱えて言った。 「それとこれとは話が別だろ……。とにかく、真昼間から屋根に上り下りすんのはやめてくれ……。ごまかすの大変なんだから」 「誰も見てないじゃん」  と、それがどうしたとでも言うように、悪びれもせず言い返してくる。  そんな彼女に、彼はこめかみをひくつかせながら言った。 「三日前に向かいのおばさんが母さんに聞いてたぞ。『アヤちゃんによく似た子がお宅の屋根に登ってたけど、なんなんだろうね?』って」 「そ、それはたまたまだよ!」  そう言ってなおも開き直る彼女に、彼は更に、 「その前の日はクラスの片岡に、『オレこの間アヤちゃんがお前ん家の屋根で鳥と遊んでんの見たぞ。アヤちゃん鳥好きなのか?』って言われた。因みに昨日は家の裏の爺さんに、『最近アヤちゃんによく似た子が宅の屋根の上でうちのタマと遊んどるんじゃがありゃわしの見間違いかのう?』って聞かれた。猫と遊ぶなら屋根の上じゃなくてもいいだろ!?」  そう一気に、半分怒鳴るようにまくし立てた。そして、この後の彼女の反応に備え、構える。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!