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とある平日の、午前十時過ぎ。
うちの学校が創立記念日で休みだということを一昨日篠田に知らされた俺は、私立久米外国語大学を訪れていた。
小さくて白い、倉庫のような感じの部屋で椅子に座っているのだ。
そして俺の前にはもう一脚、椅子がある。
既にアポイントメントは済ませてあるので接触は楽だろうと推察するが、只者でない人間がそう簡単に面会を許してくれるかは疑問である。
まあ、そうなれば究極の話術兵器である『シンヨウサレール』の出番となる。
ただ、今回の収集活動において兵器の使用はできる限り避けなければならない。当たり前だが。
と、右肩に重みがのしかかる。
考え事をしている間に、彼女が来たようだ。
「こんにちは。南芦華様ですね」
「こんにちは、ボク」
後ろを向いて顔も見ずに挨拶すると、そこで立ち止まって挨拶を返してきた。
幸い、相手はこちらを子供扱いしてくれているようだ。
まだこの前の救世主ということには気がついていないのだろう。好都合なので放っておくとしよう。
「単刀直入に申し上げますと、貴女の所持している不思議アイテムを僕に譲っていただきたいのです」
「……この、指輪を?」
ええ、と相槌をうつ。
「もちろん、タダでとは言いません。貴女の未来予定、通訳のスペシャリストを紹介しましょう」
真面目に将来について考えているのなら受けるしかないはずだが、何せ相手が中学生なので疑っているようだ。眉間に皺が寄っている。
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