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目が覚めると、そこには知らない天井があった。
「おはよう」
いるかいないかもわからない南芦華に挨拶をすると、動かない体に違和感を覚えた。
確認するが、何も不自然なところは見当たらない。
「おはよう。……何やってるの?」
「……金縛りにあってます、はい」
南芦華の声色から、彼女に心当たりがないとわかったので、ありのままを話した。
「それはまた災難だね」
「まあね」
軽口で返す。
はっきり言って、この状況は大変危険だ。
不思議兵器の一つであるホレリングを嵌められてしまっているので、彼女に殺されそうになっても抵抗できないからだ。
「それで、相談なんだけどね」
彼女は小さめのカッターを懐から取り出すと、俺の目の前で刃を出したりしまったり……ようするに、チキチキしだしたのだ。
当たり前だが、恐怖ぐらい感じる。
いや、感じなくたって、これから自分がどうなるかはわかるだろう。
「死んでくれると助かるなあ、なんて」
申し訳なさそうにはにかむ南芦華。
やはり彼女に惚れているのか、殺されてもいいと思う自分がいた。
……できれば、これは使いたくなかった。諸刃の剣というか、失敗でも成功でも俺にリスクがある。
「そう、ですね。僕の愛を受け止めてくれたら」
言いながら、懐から取り出した美少女フィギュアだったものを嵌める。腕輪だ。
……不思議と、体は動いた。
腕輪を身に付けた瞬間、それからとてつもない量の感情が溢れてくる。
「……なんて言わず、僕を受け入れさせます」
言って、飛び出す。
動揺した南芦華は、俺と彼女との間にカッターを置くだけ。
やはり、一般人だ。
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