理想の主人公像、其の弐

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恋慕、愛情、そして殺意。 それら全てが俺の心を百パーセントずつ支配している。 迫る彼女の体。 南芦華に声をかけたい、触りたい、愛されたい。……それが叶わないことだって、最初からわかってる。 だから。 「嗚呼」 突き出されて静止したままの彼女の腕を体の全部で捩じ伏せ、俺の左肩に持っていく。 「――っく!」 短い悲鳴をあげて離れようとするが、俺は彼女の足を刈り取ってダウンさせた。そのまま押し倒す形になるが、人のやることなすことをいつも邪魔してくる問屋がいるのが世の常だ。 「好きだ……狂おしいくらいに」 暴走してゆく体。頭ではわかってる。このまま気絶させればあとはリングを外してお終いなのに……できない。 感情が、身体が、勝手なことをして俺を困らせていく。 それほどまでに、この兵器の効力は凄まじいのだ。 とはいえ、今までで自分の所持兵器に手を噛まれたことがなかったわけではない。対処法を心得ていないことはないのである。 懐から十徳ナイフを取り出して、刃を南芦華の指先に押し当てる。少しずらすと、なめらかに垂れるそれに舌を這わせた。 「はぁ……」 愉悦の吐息が俺の口から漏れる。 すぐに頭を切り替えて腕輪を外した。 途端、南芦華が欲しいという願望が収束して脳の片隅へと沈んでいった。 相も変わらず指輪は嵌められたままだ。というかこれ、親じゃないと外せないタイプか。 さて、と。 「そこで変態を見る眼で俺を見てるお姉さん。俺と貴方の名誉のためにも、このことは黙っていて頂けると有り難いんですが」 「……え? いや無理でしょ!」 まあ、そうでしょうね。 「血飲むとかあんた何考えてんの変態じゃない!? さっさと警察に……」「言えませんよ」 彼女の声を遮るのは、もちろん俺。
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