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「なぜなら、貴方はもう僕から逃げられないからだ」
「……なに、それ」
吐き捨てるように浴びせられる言葉に、顔を綻ばせる。使用者でありながら今の俺の心理状態を把握しきれていないとは、兵器の使い方がおざなりだな。
まずは説明からしてあげよう。
「もう一度だけ言ってあげます」
呆れたように嘆息を吐けば、たちまち彼女のご機嫌は斜めになる。いい反応だ。脅かし甲斐がある。
「――僕は貴方を逃がさないし、逃がせない。この忌々しい指輪のせいでね」
とたんに怪訝な顔になる南芦華。
「そして、この指輪の効力は対象者が死ぬまで続く。つまり何が言いたいかというと、まあ……外せないってことさ」
その瞬間、南芦華は勝ち誇った笑みを見せる。
「嘘だよ」
そりゃそうだろうよ。だって嘘だもん。
「いや、本当だよ。父さんが言ってたし」
事も無げに言うと、彼女は当惑の表情を浮かべた。恐らく、俺の父親より信憑性の高い人物の模索でもしてるんだろう。
本当は友人が調べてくれたんだけどな。
さて。あとは勝手に聞いてもないことをべらべらと喋ってくれるだろう。
「私だって、かっ、彼氏が言ってたんだから!」
……彼氏?
そうかそうか、彼氏ときましたか。ていうか、彼氏ってこいつの中で父親より信用できるのか。
「いや、貴方に彼氏とかいるんですか」
「いや、いるし! 恵山一之くんっていう素敵な彼氏がいるんだから!」
「……なるほど」
「やっと納得してくれた? やっと? ていうか彼氏って……キャー! あの、彼氏っていうのは……いないし」
五月蝿かったので退散させてもらった。
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