理想の主人公像、其の壱

2/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
よっす! 俺、高科正城(タカシナマサキ)ってんだ! よろしくな! ……で、突然だが、俺は今大変なことに巻き込まれている。 なんと、苦労して調べた組織の秘密が麻薬の密輸だと知り、そこの構成員二人が女の子に絡んでいる場面を偶然見つけたので近づいていったら、いきなり銃を突き付けてきて、俺は殺されそうになってんだ。 けど、こんな時は素早く冷静に対処するのが主人公ってもんだろ。 このくらいの雑魚の銃なら、俺の秘密兵器の一つである『完全防御ミラーサクリファイス1005』で跳ね返せ……ん? し、しまったぁ! 三日間持ち歩いたから、今日は洗濯の日なんだった! 「……ひッ!」 目に見えて焦る俺を見て好機と悟ったのか、男の一人が女の子のこめかみに銃口をくっつけた。 くそっ、なんの罪もない人を怖がらせるなんて! だが、これで下手に動けなくなったのも事実だ。 俺は黙って手を挙げる。白旗でもあれば、振ってやったんだけどな。 俺に持ち物はほとんどない。何故なら、今日は非番の日だったからだ。 年中無休で正義の味方なんぞ……いや、やりたくない訳じゃないんだ。 ただ、休みはほしいよねって話。 しかも、儲からねえ。 正義の味方は年中無休で営業してないが、年中無休で金欠なのだ。 さて、ここで装備を確認してみよう。 今現在の俺の持ち金はゼロ。持ち物には飴玉が三つと秘密兵器の一つ『大泥棒カスメトールX』だ。 カスメトールは使い捨てだが、うまく使えば相手の服以外の物を全てかっさらえる。切り札にはもってこいの兵器といえる。 もちろん、臓器とかも奪える。 だから、今回奪うのは心臓一択だ。 銃口が俺に向いている男の方までは、目測で七メートル程度。そしてさらに五メートル程離れたところに、女の子と男がいる。 まず最初にノーモーションで、包装紙から取り出した飴玉を女の子に引っ付いている方の男に投げる。 結構な速度で投げたので、案の定こいつらは爆弾か何かと勘違いしてくれたようだ。男は女の子を掴んだまま横に倒れ込んだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!