理想の主人公像、其の壱

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この女の子……女に文句の一つも言ってやりたいのは山々なんだが、やはりそこは主人公様として立派な立ち振舞いを心掛けんといかん訳ですよ。 「もう大丈夫ですよ。悪漢は懲らしめました」 「うんうん……怖かったよね。お姉さんのために戦ってくれてありがとうねぇ」 は? あんな弾丸の重みもわからないような下っ端が怖い訳ないだろ。考えて物言えよビッチが。 「いえいえ。貴女のようなお綺麗な女性の為ならば、喜んで我が身を省みずお助けしましょう」 流石は俺。なんて紳士なんだ! これは惚れただろ。ふはは。 ざまあ見ろ世界の冴えない男達め。 俺は今日こそリア充の仲間入りを果たすんだ! と自己陶酔に耽っていると、「今日は本当ありがとね。一生忘れないよ」と言って夕闇の中に消えていく女。 混乱する俺を差し置いて、明るい笑顔で去っていきやがった。 「……糞が! 一生思い出すな!」 そう。 正義の味方とは、無償なのだ。 おまけに秘密。 これほど神経を遣うのに報われない仕事はないんじゃなかろうか。 ふざけてやがる。いや、割りとマジで。 その日は帰って飯食ってポルノ雑誌で抜いて風呂入って寝た。 なんとも、俺の女性経験の少なさを痛感した一日だった。
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