理想の主人公像、其の弐

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「で、お前はどう思うよ、篠田?」 「ああ、カスメトールははっきり言ってもう無理だ。新しいのの調達に向かうしかないな」 そうか……新しいのか。 篠田は持参した茶色の鞄からノートパソコンを取り出す。ちなみにこの鞄は皮で作られているので、結構丈夫だ。 ノーパソに無線LANを差し込む篠田。彼は眼鏡を掛けていないが少しイケメンなので、その所作はそこそこ似合っていた。イケメン死ね。 「そもそも、カスメトールが今回使えたのだって奇跡に近い」 うん、それは前回修理してもらったときに聞いた。 「高科の高い技術と五分の一を引き当てる運があったからこその結果だ」 「誉めてもなんも出ねえぞ」 「お前の家で何かが出てくるとも思ってねえよ。まあ聞け」 それは酷すぎだろ。 俺ん家だって菓子くらい出す時は出すし。出さない時にたまたまお前がいるんだよ。 ってことを篠田に伝えたらビンタされた。 なんでもかんでも暴力に訴えるのはよくないと思う。まずは話し合いの意思から始めればいいのに。 篠田は気を取り直すために一つだけ咳を落とす。 目を細めて俺に視線を向けた。俺も見つめ返す。 「そこで、だ。今回はあらかじめ緊急の事態に備えるため、カスメトールとその他諸々の兵器を二つ以上ずつ収集しておこうと思う」 ……ほう。 ほうほうなるほどろんりーぼーい。 つまりは、何度も奪取する手間を省くために今回だけ物凄く頑張っておこうと。 「お前、ちゃんと俺を楽させることも考えてるんだろうな」 「は?」 何言ってんのお前、みたいな顔をしてきた。もうやだこいつ。 いやぶっちゃけ俺だけじゃ無理に近いから。 逃げたりしたらまたビンタなんだろうなって思うと、これ以上は何も言えなかった。我ながらなかなかの情けなさだと思う。
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