序章

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 認識と理解の範疇を越える出来事に クラクションがけたたましく鳴り響き、人々の絶叫が建ち並ぶビルの間で反響する。  ハリボテの様に容易く崩れ落ちる高層ビルの瓦礫に押し潰され、佇む足下はたちまち赤に染まる。 力無くダラリと垂れた左腕が、少年の動きに合わせてブラリブラリと前後に揺れる。 少年の左腕は存在こそするが、その機能は失っていたのだ。 「まだ意識があるのか。しぶといなぁ」  少年の眼前で、男が笑った。  男。いや、女かも知れない。声こそは低く、明らかに男のものなのだが、外見的特徴から結論付けようとすると疑問が生じる。  僅かな胸の膨らみが確認できるのだ。体は細く、胸もある。異常なのはその声と、鋼の様に鈍い輝きを宿す黒い体だ。
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