第一章 運命が廻り始める

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 頭がはっきりとしない。    以前生活していた場所と同じ眩しい光が、閉じた瞼の外から認識出来るほどに感覚を刺激する。  と同時に激しい激痛が身体全身を蝕む様に走る。初めての経験である。  視覚が感覚を取り戻した時、身体全体への痛感神経も感覚を取り戻したようだ。 「イテッ!」  言葉の意味など知らない。知らないが、つい口から発せられたのだ。 「先生!意識回復しました!」  誰かが叫ぶ声が、感覚を取り戻した聴覚に飛び込んで来る。 「聞こえますか?今、あなたは病院にいます!聞こえますか?」 「オペ室準備して!前原先生を呼んで麻酔の準備!」  怒声が響く真っ白な光の中で、自分は何をすればいいのか激痛の中悩んだ。何に対して聞かれたのか?何に対してどう反応すれば良いのか・・・?  激痛が続く身体全体のどの部分を動かせば、周りに何を伝えられるのだろうか・・・。  それを考えようと、痛みが走るどの部分かを動かそうとしてみる。 「反応あり!」 「聞こえますね!これから怪我した部分の治療に入ります。手術をします。麻酔をします。頑張ってください」  光をバックに影しか見えない人が声を掛ける。 たぶん、それは女性なんだろう。真っ白な光の中に浮かんだ真っ黒な影に、表情などを伺う事など出来ない。ましてや、視覚は完全に回復していないのだから・・・。  何かを口の周りに当てられた。そこから聴覚を微かに刺激する何かが流れる音が聞こえる。  その音と共に視覚、嗅覚がおぼろげに失われていく感じを感じる。  再び、頭の中に真っ白な靄が立ち込めていく。  激しい痛みが消え、身体を何かが撫でているという不思議な感覚を感じるだけで、一切何をされているのか等、考える余裕など無かった。  次第に聴覚も失われていく。  ぼんやりする意識の中で何かが語り掛けてくる。 『君は誰なんだ?僕は・・・、僕は死んだのか?』  真っ白な意識の中にかかる白い靄が晴れていく中、一人の人間と出会う。 『君が?話し掛けて来たのは・・・』 『君こそ、誰?僕は、死んだのかい?』
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