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森の奥深くにあるこの館。“人”から恐れられている“魔女”は、本当は優しい。そんな魔女と黒猫の小さいお話。
『ねーソレイユ。お腹すいたよ。』
僕は黒猫。でもまだ子猫なの。リュンヌって名前なんだぁ。え?うん、魔女のお陰で喋れるんだよ。
ソレイユと呼ばれた魔女。それはこちらを見て微笑み。指を鳴らした。
瞬時。ポンポンポンッと弾けるような効果音と共に宙に浮かんだ物は、たくさんのお菓子。
この子猫には到底食べきれないであろう複数のお菓子が、パタパタと大きい硝子製のテーブルに落ちていく。
『わあ‥ありがとう!』
猫はすぐ近くにあったマカロンに真っ先にかじりついた。
魔女はその様子を見てニコリと微笑んだ。
「リュンヌ。遠慮しないでね。たくさん、たーくさん食べるのよ。」
『うん♪やっぱりソレイユの出したお菓子は美味しいなぁ。』
僕は魔女のために生きている。
魔女も僕のために生きている。
でも、僕はいつだって自殺する。
剥がさなくても済む、封がすでに空いてるお菓子を
口から詰めて、
詰めて詰めて詰めて詰めて
詰めて詰めて詰めて詰めて
詰めて詰めて詰めまくって。
飲む。
くる し…
…………………
パタッ
「あらあらもう…ふふ。」
どこからともなくやってきたエメラルドのふわふわとしたモヤがリュンヌを包み、ソレイユはリュンヌを生き返らせる。
『んー…』
リュンヌは目を覚まし、ブルーの瞳をパチクリさせてから辺りを見渡した。そこにはいつもの美しい魔女が。
「リュンヌ、大丈夫?」
『あ、れ…?』
「…もしかしてまた失敗…?」
美しいけれど、まだあどけなさが残ったソレイユの表情は曇りかけていた。
『…ううん。今回は寿命が長いみたい。体が軽いよ!やったねソレイユ!蘇生魔術、いい感じだよ♪』
その途端。ソレイユは少女の笑みでリュンヌを抱きしめた。
「いつも死んでくれてありがとー♪」
『あ、ちょ…』ボキボキッ
リュンヌは力尽きた。
「あ…力強すぎたか…ごめんリュンヌ(;;)」
ふわふわ。
これも、魔女の魔術を強めるため。
いつも。毎日。常に。生死の繰り返し。
あれだ。猫は辛いよ
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