11人が本棚に入れています
本棚に追加
その身を突き動かすのは負の衝動。ゆえに本能の赴くまま、異形の者は想助を喰らわんとする。
想助は噛みつこうとした異形の主の攻撃をかわす。耳元でガギン! と牙と牙が獰猛な音を打ち鳴らした。
攻撃の機会が巡ってきた。それを易々と見逃す想助ではない。一歩踏み込んで、懐に入った。
ありったけを込めた拳。放つのは今だ――!
【「魂震の一撃!!】」
掬い上げるようなアッパーが、牛頭の胸元に到達。そのまま、ずぶりと手首の辺りまでが身体に侵入する。
変化は瞬間。ぶるりと異形の主が一度大きく震えたかと思うと、その身体のいたるところから光の粒子が洩れだしたのだ。
光の粒が天に昇る。それに比例して、牛頭の者もまた、徐々に輪郭を失いつつあった。
魂震の一撃。それはまさしく、魂を震わしめる。
己を形作る核を震わされた魂は拠り所を失い、たちまちに消滅してしまうのだ。
最初のコメントを投稿しよう!