‡第一章 想助の日常と非日常‡

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   想助は住宅の合間を縫う路地に降り立ち、頭上を見上げる。  やがて牛頭の怪物がその全てを光の粒子となって消え逝くまで、じっと眺めた。   「想ちーん、お疲れ!」    路地の向こうから声を寄越され、視線を下ろす。  暗闇から歩いてくるシルエットが二人いる。近付いてくる聞き慣れた声の主が、間もなく道端の街灯に照らされてその姿を現した。   「今日もバシッとキメちゃったね。さすが」    気さくに笑いかけてくるのは幼い頃からの友人であり、同僚の六条 剣時だ。灰色がかった丸刈りと真ん丸眼。  いわゆる童顔と呼ばれるやつで、こうして笑っていると中学生――下手をすると小学校高学年に見えなくもない。    おまけに背もかなり低い。ただし、これは彼にとって禁句だから、面と向かって言ったことはない。   【僕として、は、もう少し、剣時クンに手柄、があって欲し、いものだけど……】    そう呟いたのは剣時の隣に控える、天貝 健人である。  
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