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少女は、ずっと不機嫌そうな表情を崩さなかった。いっそそれがデフォルトなのかと勘繰ってしまいかねないぐらい、終始徹底してしかめ面を維持していた。
端から見れば、まず近付くことが躊躇われただろう。少し想像力が豊かな者だと、噛みついてこないかな……とか危惧するに違いない。
とにかくその少女は、刺々しい雰囲気を放散しているのであった。
少女は自室で荷造りをしていた。赤い子洒落たボストンバックに、必要なものをテキパキと突っ込んでいく。仏頂面をしたまま。
その背中へ、
【あららら、随分とご機嫌じゃん? 凛華ってば】
快活とした声がかかったのだ。途端に、少女――凛華の顔の渋さが二割増しになる。面倒な奴に見られた、と心中で嘆く。
このまま無視を決め込んでもいいのだが、それで易々と引き下がる相手でもないことは自明である。……何せ、長年のパートナーなのだから。
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