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「おお想助、帰ったか」
玄関口で靴を脱いでいると横手の居間からひょっこり顔を覗かせたのは祖父の八汰 想仁である。禿頭が今日も今日とて眩しい。
「どうかしたの?」
「あぁ。今しがたの、九我の坊主から連絡があったんじゃ」
「光也から?」
想助の頭に一人の人物像が浮かび上がる。
想術師としての同僚、九我(くが) 光也。九の数字を戴く彼は自分の一つ年上で、物静かながら芯の強さを持ち合わせており、幼い頃から交誼を結ぶ仲であった。
最近では主に自分のせいで疎遠となってしまい、こちらから連絡を入れることも無くなってしまっていたが、一体何の用事だろうか?
その疑問はすぐに解消されることとなった。
「ほれ。いつもの会合じゃよ」
「ああ、もうそんな時期か……」
得心の声を挙げると、一人把握しきれていない東雲が眉間を厳しくする。
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