‡第一章 想助の日常と非日常‡

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   玄関から伸びた通路の先から涼やかな声が寄越した。  キッチンの方から、青い青年が滑るように近付いてくる。    ……いや。実際に滑っていた。  青い髪に青い着物。そして名もまた、葵。  想仁の従者を務める善霊であった。   【出た。年齢不詳で性別不詳のカマ野郎……】   【私は男です】   【あっそ。で、ドコまで行くんだ?】    東雲は横に向いて想助に訊ねた。出来るだけ葵を視界に入れないようにしているのを悟って、心中で苦笑した。  この二人。恐ろしく気が合わないのだ。    事の発端は、東雲と相棒の関係となって、彼を祖父に紹介した時である。  想術師としての決まりや心構えをくどくど説明し始めた葵に対して、東雲はこう言ったのだ。   【オレは別にな、正義のヒーローとかになりたくてココに来た訳じゃねぇんだ。そういうのメンドクセェからパス】    葵という人物は正義感が強く、善人の模範のような気質の持ち主だった。  
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