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とはいえ確かに、家族全員が荷物の準備に取りかかってる間は、彼女が暇を持て余すのも仕方なしと言えなくもないか。
何故なら、
【幽霊のアタシが準備なんてしてたらオカシイっしょ?】
彼女――白石 茜は幽霊だからである。
シャツとジーンズだけのカジュアルな衣服は生前のままだし、健康的な肌は下にいくほど薄れて、踝辺りとなると輪郭は曖昧で、向こう側の光景が透けて見えていた。
善霊と。自分達の間ではそう呼ばれる存在であった。
幽霊ならば遠出をするのに、荷物なんて必要ない。それはそうだ。
「アンタに必要なくてもウチには必要やの。やから邪魔せんといて」
さっさと済ませてしまおう。そう思い、作業に戻ろうとした凛華の耳に忍び笑いが通過した。
【にひひひぃ……。そりゃあ気合いだって入るよね、いやー、ごめんごめん】
というか、全然忍んでいなかった。
むしろこれみよがしである。
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