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「そーちゃん……もう食べられないの……」
「でしょうね」
そして数分後。俺の隣に座っていた吹雪から、そんなギブアップの声が聞こえてきた。
吹雪は自分が注文した分の半分しか食べておらず、今は悲しみと絶望に満ちた表情を俺に向けている。
……いや、そんな顔されても…………頼む前に気付こうぜ?
「んきゅ……んきゅ……ふにゅー……!おいしーのです……!」
そんな悲壮感溢れる吹雪とは対照的に、雪崩ちゃんは幸せそうにココアを飲んだ後。満面の笑みを俺に向けてきた。
…………和みます雪崩さん。
「ほら、あとは俺が食べるから」
俺は一通り雪崩ちゃんで癒された後、吹雪の食べ残しを受け取り、平らげていく。
「そーちゃん、ありがとなの……」
「はいはい」
俺は一度食べる手を止め、申し訳なさそうにしている吹雪の頭を撫でた後、また食べるのを再開する。
吹雪はたまに馬鹿な事をしでかすけど何故か憎めないんだよな。
なんだろう……今までは母さんと二人きりだったからあんまり分からなかったけど、こういうのを家族の幸せとか暖かさって言うのかな。
「……ハハッ!」
「ふゆ?どうしたのそーちゃん?そんなに美味しいの?」
「おいしーのです……?」
そして、急に笑い出した俺を不思議に思った二人が俺の顔を覗き込みながらそう尋ねてきた。
「ああ……美味いよ」
吹雪達と食べてると一層な。
おかえり…………吹雪。
「じゃあふーちゃんも食べたいのっ!」
「結局食うのかよ」
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