種火

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「本物のクロス君はどうした?」 「アイツはまだ生きてるよ。今は場所教えらんねーけど」 「そうか……じゃあ場所を教えてくれるのはいつかな?」 「俺の都合がついてから」 「じゃあ、今言うのは都合が悪いわけだ。それを力ずくで聞き出せば、どうなるのかな」 ケーニヒの殺気が強くなった。 並みの術師なら、恐怖に足がすくんで立つことすらままならないだろうほどの、鬼のような威圧。 それを正面から受けてなお、“侵入者”は平然と立ち、 「うわ怖っ。まあ落ち着けよ会長。そっちの策は分かってんだから」 「!?」 「アンタの殺気は陽動だろ? 思わせぶりな態度をとって、殺気を出して俺の注意を引きつける。その隙をついて、今部屋の外で待機してるヤツらが襲ってくるってわけだ」 「……さあ、どうだろうね」 ケーニヒは苦笑する。 “侵入者”の言う通りの策を、ケーニヒは事前に用意してあった。 偽クロスに対し、本物かどうかの最終確認をとった後、ケーニヒが臨戦態勢をとる。 それまでに、扉の向こうと隣室に術師を配備、“侵入者”がケーニヒからの逃走を開始するか、あるいは間合いをとるために壁際に来るかした時を狙って攻撃をしかける。 そういう手はずで、実際今壁の向こうには術師が多数いるはずだ。 「まあでも、俺に攻撃すんのはやめといた方がいいよ。絶対後悔する」 「なぜだい?」 「これもまだ、言えねーなあ」 「君は秘密ばかりだねえ」 ハッタリだ、とケーニヒは断定した。 この、クロスに化けた侵入者は、何らかの方法で今置かれている窮地について悟った。 が、それを突破する術はもたなかった。 だからこうして、不敵な態度によってハッタリをしかけてくる。
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