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「……何だと?」
ケーニヒは耳を疑った。
言っていることが何を意味するかまで分かったケーニヒだが、その事実を受け入れられず、問い返す。
「俺は、クロスに化けて今まで接してきたんじゃない。クロスの体を操ってただけだ。つまり、アンタはクロス本人を傷つけ、拘束してるんだ」
「私は……自分の手でクロスを……」
「言っただろ? 後悔するって」
クロスの体を乗っ取っただけと言う“侵入者”は、高らかに笑う。
結局、この体はクロスのものだ。
クロスの精神がどうなっているのか分からないが、少なくともクロスの体を今、ケーニヒは大いに傷つけた。
それはやはり、ショックなこと――のはずだったが。
「なーんてね」
「!?」
「敵に乗っ取られた部下をどうしようと、痛めるような心を僕は持ちあわせていないよ。そんなものを持った人間が、組織の長になれると思うかい?」
「なるほどな……そりゃそうか」
「で? クロス君を操っている君本人はどこにいるんだい?」
これが、最も重要なことである。
だが、そんなものが聞き出せるはずがない。
“侵入者”がそれを自白しても、不利にしかならないからだ。
と思っていたが。
「コイツの部屋だよ」
「……!」
意外にも、“侵入者”は答えた。
いくつか可能性を考慮して、問いかけによって反応を見る。
「嘘をついて我々を誘導し、逃走の時間を稼ぐ気かい?」
「いや別に逃げる気ないよ? さっき話してただろ? コイツの部屋に行った奴に、最後の挨拶しろって」
「言ってることの意味が……」
「そりゃアレだ。お前、常識に捕らわれすぎなの。俺の強さはお前常識の範囲外。だから、居場所を知られたって何も困らないし、むしろ返り討ちにできる」
「……お前は何者だ」
どうも本気で言っているらしい言葉を不気味に思いながら、ケーニヒはクロスの体を通して相対する敵に、素性を問う。
ニヤリと“クロス”は笑い、こう答えた。
「アース……つまりお前らの言うところの否獣、の組織の王。マオーだ」
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