種火

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「魔王……!?」 「いやあの、魔王じゃなくてマオーな?」 「?」 「魔界の王的な意味での魔王じゃなくて、単なるマオーってこと。サタンとかみたいのじゃなく、Maohって感じの」 「……どうでもいいよ。アースの王なのだろう?」 「そうだけど! そうじゃなくて! だってアースは魔法使わないもん!」 先ほど見せた不気味さはどこへやら、ずいぶんと幼稚というか、変な人物のようである。 だからこそより一層、不気味ではあるが。 「そうか、まあいい、君が強かろうと弱かろうと、我々は君を排除しないわけにはいかない。そんなわけで君の本体、殺させてもらうよ」 「ああいや、ちょっと待って」 「何かね? この場での君に質問の権利など存在するとは思えないんだが」 「いや、警告と提案。実は俺の他にも強い奴呼んだんだよ。お前とじっくり話がしたくてさあ。殺しとか、他の奴に任せてな」 「……話だと?」 「そ。アースの今後の方針とかそういう話。じゃ、まあ、待っててよ。俺は本体動かして、またこっち来るからさ」 言い終えると、クロスは糸の切れた人形のように脱力した。 今はケーニヒの刺した二本の鉄杭だけがクロスの体を支えている。 「クロス君!」 ケーニヒは叫んで、体の所有権を奪われていたクロスへと駆け寄った。 ひどい怪我だ。 胴には、後ろから貫通している刺し傷やたくさんの傷穴が空いていて、とんでもない勢いで血を流している。 「会長……すみません……」 「喋らないでくれ。急いで治す」 人質を取られても、変則的には先ほどのように、部下が体を乗っ取られていても、心を揺らさないケーニヒ。 だが助けられる命がそこに転がっている時は別だ。 全力で救う。 緑色の炎が、クロス本人に支配権が戻ったクロスの体を癒やしていく。
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