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結局何事もないまま、映画は終了した。
内容は、可もなく不可もなく、という感じ。
アクションを交えた恋愛ストーリーと、あえて現在の自分達の状況に近いものを選んだのだが、実際に“アクション”をしている虹炎術師の目には、フィクションのアクションはリアクションに困るほどにチープに映った。
「面白くなかったかな……?」
心配そうにレイが訊く。
この映画を選んで提案したのがレイだったからと、
「翔太ずっとあくびしてたから……」
「え? ううん、そんなことないよ! あくびは……その……」
「言い訳しなくても良いんだよ……?」
「違うんだ……、昨日の夜、緊張して眠れなくて。楽しみ過ぎてさ」
「! ……あうー……」
なんと反応していいか分からないレイは、意味のない声を出した。
その反応に翔太は照れ、二人は黙りこんで立ち止まる。
人々が不審がる目を向けてくるが、それも気付かず五分ほどそうしていた。
「あーえっと……とりあえず次、行こうか」
「……うん」
人の溢れる聖夜の街へ、二人はまた歩き出した。
目指すはタワー。
赤い砂時計型のタワーだ。
人ごみに流されるように、ゆっくり歩いて目的地を目指す。
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