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チケットを買って、タワーに入る。
長いエレベーターに乗って、展望台にたどり着く。
時々は言葉を交わしながら、二人は窓の外に広がる景色をぼんやり眺めていた。
冬の日暮れは早く、だんだん暗くなる風景と、代わりに灯る街明かり。
しばらくして、山と海に挟まれた狭い街が、星空を映した鏡のような綺麗な夜景を演出した。
海から山まで。
自分達の街のあたりを二人で見つめ、静かに肩を寄せた。
もう、変に緊張するようなことはなかった。
綺麗で静かな雰囲気が、二人の意識をつなぎ合わせていた。
今ならば。
「……、」
「! ……」
翔太はそっと、レイと手をつなぐ。
虹炎術と出会ってから、幾度もつないだ手。
今は、ずっと翔太がレイの隣に、レイが翔太の隣にいることを意味する。
その後、記念メダルを買って、お互いの名前を打ち込んで交換した。
十分な時間を潰して、程よくデートに慣れて、二人は自分達の街へ戻る。
二人の手は、つないだままに。
ぎゅっと握ると、同じように握り返してくる。
同じ路線を、昼と逆向きの電車に乗って引き返す間、無言のまま手と手でやりとりを楽しんでいた。
行きに敬遠したバカップルへの一歩を踏み出し始めている。
街に帰り着くと、駅前はそれなりに華やかだった。
しかし、リョネルとの戦いで大損害を受けた街はまだ修復の途上。
まだ瓦礫も片付かない、ビルを中心とした被害地を見て、翔太はこのデートの裏の目的を思い出す。
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