吾輩は亀である

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そうそう、人間という者は時々我々を捕まえて似て食らうという話しである。 スッポンという亀はしょっちゅう人間に食されている。 なんと人間の恐ろしいことか。 あろうことか、「月とスッポン」という亀を冒涜したような言葉までも作成し それをさも哲学的といわんばかりの顔で使用しているのである。 まったく、人間というものはほとほと呆れた生物である。 しかし、彼の掌に乗せられてスーと持ち上げられた時 なんだかフハフハした感じが有った。 掌で落ち着いて彼の顔を見たのが人間という者を初めて見た瞬間である。 何だか妙な生物だと感じたのは今でも記憶に残っている。 甲羅に覆われているはずの背中には何も背負われておらず、 脱皮したであろう筈の痕も一切ないのである。 私はたくさんの亀に出逢ってきたがこんな輩には一度も出くわしたことはない。 変わった者だ…しかし何かの縁で私をこうして掌に乗せてくれたのだ、 少し生活を共にしてみたいと思う。 これから始まるのはそんな私「亀」と「人間」の奇妙な物語である。 ちなみに私は遭難などしていない! 断じて道に迷った訳ではないのだ、 すこし帰り道が分からなくなっただけである。
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