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その日の午後、谷川と菊地は例の笹倉の研究室のある場所へとやって来ていた。流石、最近テレビに引っ張りだこの有名人の研究室のある場所だ。高級そうなビルである。
「この中に笹倉の研究室があるワケだが…、」
「どうやって入りましょう…。」
「さぁてな…。」
「え…?考えて無かったの…?」
「まず、場所を見ないと考えられないだろ。これだから素人は…。」
「そんな…。サクッと中に入って、なんやかんやで笹倉の部屋に潜入して、証拠のファイルとか持ち出して、警察よんで逮捕って流れかと…。」
「お前なぁ…。この話は、ミッションインポッシブルじゃないんだぞ…。」
菊地はがっかりしてその場に体育座りの体制に入ってしまう。谷川はやれやれといった表情で、自販機のコーヒーのボタンを押した。
「…。先生…。」
「どうした?」
こちらを振り向いた菊地の顔は完全に死んでいた。
「探偵って…、地味な仕事なんですね。」
「…、お前なぁ、ホームズがエレベーターの裏に張り付いたりなんてアクションすると思うか?」
「…。いえ…。」
「ハァ…、分かっただろ。探偵ってのは地味な作業の積み重ねの中で謎を暴くんだよ。」
「クソ…、これじゃ合コンで自慢できない。」
「そんなことの為に俺に弟子入りしたのかよ…。」
そう呟くと、谷川は自販機に手を入れた。しかし、出てきたのはコーヒーではなく、胡瓜味のコーラだ。この自販機。壊れている…。
谷川は2、3秒コーラをみつめ、それを菊地に投げ渡した。
「菊地。それ飲んだら任務だ。」
「!?。遂に。」
「まずは、笹倉の回りの人間からだ」
そういうと、谷川はビルの中に足を踏み入れた。
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