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「えーっと…。集英社の方ですか?」
「えぇ、笹倉先生に今回ジャンプSQに読み切りで載せる話の主人公にしようと思ってるんですが、こんなエピソードがありましたって言うのを是非、教えて頂きたいと、今日、参上した次第でございます。」
(やるなぁ先生。これなら全く怪しくないよ。)
受付嬢の人は、手元のリストを見つめ困った表情を浮かべている。そりゃそうだ。今日、いきなり押し掛けて来た谷川達の名前など、そこのリストに入っているワケがない。菊地はちらっとそのリストをみて、思わず声を挙げそうになる。
そこには、どっかの社長の名前だったり、芸能人の名前だったりと…。たかが一雑誌の読み切りマンガを描く者など、場違いにも程があるモノなのだ!。
(うわぁ…、)
「あの…、先生とお会いになる予約はされてましたか?」
あ…。詰んだわ。
菊地は前髪を捻りながら近くのイスに座り込んだ。
もう、終わりだ。英語っぽく言うなら、ジ・エンドだ。
しかし、谷川は別だった。
谷川は、受付嬢の手を取り目を見つめ、ただひとこと、こういった。
「貴方は、お美しい…。」
は?
菊地の頭に浮かんだのは、その一言だけだった。
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