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外の景色が見えるタイプのエレベーターに乗って、二人は十二階へむかう。
よく思うのだが、このタイプのエレベーターって、フリーフォールが苦手な人には、地獄ではないだろうか。菊地は高所恐怖症である。
「こ…、怖かねぇぞォォォォォォォ、怖くなんか有るもんかァァァァァァ!」
言葉と態度が正反対である。菊地は谷川の肩にしがみつき、初めてフリーフォールに挑戦する人みたいな顔をしている。(どんな顔か知らないけど)
「無理はすんなよ。」
「お…、俺は降りないからな!。」
「いま九階か。十一階で止めて、一階まで下る?」
「ふざけんな!ドS!鬼畜!好きな女の前でだけ唾吐きまくって話してフラれろ!。」
「…。よし。止めるか。」
「すいませんでした。以後言葉遣いの改善に努めて参ります。」
「よろしい。ホレ。着いたぞ。」
「え…。」
谷川の話術にハマってる内に、十二階に着いたみたいだ。ドアが開く。
二人の目の前に一人の男が現れた。
テレビでよく観た顔。間違いない。笹倉だ…。
うっすらと生えた顎髭は、何と無くサマになっており、170位の身長。谷川なみの高級スーツ。
腕にはプラチナ時計。
この男、間違いない。
金持ちだ。
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