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~某雀荘~
「ロン、」
「ロン、」
「ロン、」
「…。」
手元にあった20万円が、局を終えるごとに無くなっていく…。
賭け麻雀という名の出来レースが展開されている…。しかもさっきから一人の若い男が集中的に狙われている。
(この三羽烏共…、見立て通りだな。さぁてと、仕事は完了したし、どうやって逃げるかな…?)
若い男は雀卓を見つめながら考える。
…。霞で視界が上手く広がらない。換気扇は故障してヤニだらけなもんだから煙草の煙がそこかしこに広がっているのだ。数メートル先のトイレすら上手く見えない。正直、よくこんな所で商売できるもんだ。
若い男は自分の手ハイを見つめる。
上がりは愚か、リーチも絶望的だ。
三萬のハイを山から取り、若い男は大きくため息をついた。
そして、次の瞬間、
バキャッッッ!
…という音と共に、木製雀卓を蹴り上げる音が響いた。
三羽烏共がポカンとしている一瞬の隙をついて、若い男はさっきまでの局で動いていた金を素早く奪い取った。
ようやく三羽烏共が正気に帰る頃には、若い男は店の出入口にいた。
パンチパーマの烏が叫ぶ。
「てめえ!何様のつもりだ!」
趣味の悪いペンダントを掛けた烏も続ける。
「こンの野郎!俺の國士の夢をよくも」
若い男は、それこそ悪者の様な笑みを浮かべて吐き捨てた。
「やらせ麻雀がよくいうな!」
そして若い男は店の外へ出ていった。
「ざけんなァ!」
三羽烏共も後を追う。
この雀荘の外は狭い一本の路地になっている。
店の外へ出た三羽烏共は若い男が逃げてる方向をみて、少し安心した。
そっちは行き止まりだ。しかも、高い塀に囲まれた…。
一分と経たない内に若い男は追い詰められてしまった。
「しまった…。」
若い男が塀から振り返ると、三羽烏共が拳を構えて道を塞いでいた。
完全に袋の鼠だ。
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