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「…。」
飛び越えられるワケがない塀にジャンプする様な動作を見せながら、若い男はため息をつく。
三羽烏共がにじりよってきた。
「小僧。あきらめな。お前は袋の鼠だ。」
「渡すもん渡したら、骨の1、2本で勘弁してやるからさ。」
(この野郎…。それじゃどうやっても俺が怪我すんじゃねぇか。)
心の中でそうツッコむと、若い男はさっきの金をちらつかせる。手を動かす度に三羽烏共の目線も釘付けになっている。
「あんたら、どこまで金の亡者なんだよ…。」
「あァ!?」
三羽烏共がハモる。すると、若い男は突然笑顔を浮かべて言い放った。
「だって、こんなはした金の為に、人生を棒にふったんだぜ。」
三羽烏共はポカンとする。若い男はさらに続ける。
「窮鼠、猫を噛むって言葉を知ってるか?」
「ハァ…?」
さらにハモる。
「有名な、孔子の言葉さ。」
違います。
「追い詰められた鼠は生き残る為に、天敵である猫にも噛みつくって言う意味さ。」
「ほぅ…、じゃあ、噛みついてみろや!」
パンチパーマの烏が勝ち誇った顔で声を張る。
しかし、若い男はそんな素振りを見せず、哀れみの表情を浮かべた。
「あのさぁ…、何を勘違いしてんの…?」
「は…?」
「鼠はお前らの方だろ。」
一瞬走る、寒い風。そして、三羽烏共…、いや、三匹の鼠はようやく気付いた。自分達の後ろに、銃を構えた男が三人居た事に…。
「な…、こ、これは…!?」
銃を持つ男の一人が声を出す。
「菊地…。コイツらで間違いは無いな?」
菊地(若い男)は親指を突き出した。
「よし。確保だ。」
そして、三匹の鼠はあっけなく、お縄についてしまったのだった…。
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