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そして、ようやく御倉優子による相談が始まった。
「それで、今回はどの様な事で、」
あくまでも冷静に…、つい数分前の菊地との殴り合いを完全に無かったことにするように、谷川は爽やかな笑顔を浮かべる。御倉優子も言葉が詰まる。
「あの、えっと…、」
「先生。無茶ですよ。さっきのを無かった事にするなんて。」
菊地が呆れた口調で言う。
「うるせぇぞ…。チャラ男型使い捨てアーマロイド。昨日の晩に、掛け麻雀の連中にスクラップにされてりゃ良かったんだよ。」
「何だとこの野郎。」
「あーもう!これじゃいつまで経っても話になりませんよ!」
痺れをきらした御倉優子の言葉で二人共、右手の拳を解く。
「…。失礼…。では、今回の相談事は?」
「はい。」
御倉優子はバックの中から、一枚の写真を取り出した。
写真には、一人の40前後の男が映っていた。
「この人の…、ウソを暴いて欲しいんです」
「ウソ…?」
菊地が首を傾げる。
「はい。」
御倉は少し表情を重たくする。
「この人…。笹倉っていう人で、有名な化学者なんです。最近では、テレビにも時々顔を出してるらしいんですけど…。」
「あ、この人見たことある。」
「…。なんだったけな…。」
「最近話題の、超小型病滅菌、HWを作り出した人物です。」
「病滅菌?」
菊地は既に話についていけていない。
「生物の体内に潜伏する病原菌を滅殺する医療菌と、いうことです。」
「なるほど…。害虫を食べてくれる蜘蛛みたいな感じのヤツか。」
「…。例えが悪い」
谷川はため息をつく。
「で、その世紀の大発明をした笹倉がウソをついてるって、そういう事ですか。」
「はい。」
御倉はうなずいた。
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