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羊たちと一緒に小高い丘をあがると、さきほどよりさらに崩落が進んでいるのがわかった。
「…」
「…」
「…ん?なんだタオちゃん」
タオが近づいてきて、ザクスの手をとった。
「これより壊そうとするものは、そなたがこしらえたものではないが、やはり胸がいたむのであろう?」
ザクスはなぜか、素直にうなづく気になった。
「残念ながらこたびはよい実をつくることがなかったが、ここまで『つくる』…ここにかかわってきたみなの労力や知恵や…それはなみなみならぬものだからなあ」
そうなのだ。そのためにシグルは…
「しかしザクスよ、そなたも国一番といわれたほどの手練れ、そうした気持ちを押してでもこの工事はやりなおさねばならない、と言い切ったのにも、それなりの理由があろう?」
「…そこなんだ。実は俺っちの親方の、そのまた親方になるひとも、この大聖堂の新築工事には入札したんだが、勝てなかった。地盤のことだけじゃねえ、その本当のやばい理由がここにはあるんだ。安上がりにもなるわけだよ…これを見な」
周りにバジル、料理の少年ディドー、おさげのリゾも集まってきた。
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