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「やだっ!!」
そんなの冗談じゃないっ!!
「ふーん」
佐藤は意味深に微笑すると、あたしの顔との距離をさらに縮めてくる。
「この怪我、どう責任取ってくれるのかなぁ?」
「それは…」
「慰謝料はなしだからな?」
うっ…
「ちゃんと責任取れよ?なんならカラダでもいいけど」
は!?
何コイツ!?
変態…!!?
「早く答えないとキスするよ?」
佐藤は唇が触れそうな距離まで顔を近づけてくる。
こんなヤツにファーストキスを奪われるなんてごめんだっ!!
「分かったわよ!!い、一週間でいいんでしょ!?」
「まぁ」
「い、いいわよ、一週間くらい、やってやるわよっ!!」
必死に叫んだのに、佐藤はフッとわらうだけ。
「は、離して!!」
この距離感に耐えられなくなって、佐藤の胸を押しながら叫ぶ。
びくともしない。
バスケで鍛えて、筋力には自信あるのに。
まさか、これは危機的状況…?
「…離して?」
効果ないって分かってるけど、上目遣い(のつもり)で佐藤を見上げてみる。
「よくできました」
優しい声と同時に、佐藤があたしから離れた。
まさか、効果あり!?
何はともあれなんとか危機を免れたことにホッと胸を撫で下ろしていると、
「おまえさ」
佐藤が呟いた。
「さっきの約束、どういう意味か分かってんの?」
「は?」
「言うこと聞くって具体的にどういうことか分かってんのか?」
「…パン買ってこいとか、ジュース買ってこいとか、金貸せとか?」
言うこと聞くってそういうことだよね…?
「もういいわ」
佐藤はため息を吐くと、体育館から去っていった。
何…?
なんなの!?
『言うこと聞く』に他の意味なんてないでしょ!?
「ま、いっか」
あたしは片付けをして、体育館をあとにした。
この翌日、早くも後悔することになるなんて、思いもしなかった…。
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