353人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
体育館に響くドリブルの音。
そう、いまは部活の時間。
女子バスケ部のあたしは休憩中。
男子バスケ部の練習風景をぼーっと見てる。
そんなあたしの背中に、ずっしりと体重がかかった。
「なーに見てるの♪陽菜!!」
「実咲子!!」
正体は同じ部で親友の実咲子だ。
「ぼーっとしちゃってー。何?男バスに好きな人でもいるのかしらぁ!?」
「バカ!!そんなわけないでしょっ!!」
「じょーだんだって、じょーだん♪」
「もぉ…」
実咲子はウフフと笑ってあたしと同じ方向に視線を投げる。
「でもさぁ…」
「ん?」
「冗談抜きに陸くんはカッコいいよね♪」
はぁ。
また始まったよ。
「あんなヤツのどこがいいの?」
「全部!!」
実咲子は佐藤陸の筋金入りの大ファン。
よりにもよってあたしの大嫌いなアイツの。
「あたしにはさっぱりわからんわ」
「あたしもなんで陽菜がそんなに陸くんを嫌うのか理解できない!!」
「あたしはああいう男が嫌いなの!!」
「はいはい。陽菜のタイプは真面目で頭がいい好青年だもんねぇ」
「そゆこと」
「でもあたしは陸くんがもろタイプ♪」
「はいはい。」
あたしも実咲子の視線を目で追う。
視線の先にはやっぱり佐藤陸。
たった今、スリーポイントシュートを決めたアイツの姿に、実咲子は大興奮。
カッコいいなんて思わない。
バスケはうまいと思うけど。
最初のコメントを投稿しよう!