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「今度、家に連れてきなさいよー」
「だから彼氏じゃないってば!!」
「ふふふ」
なんか完璧にお母さんの脳内で佐藤はあたしの彼氏になってるけど…。
お母さんが楽しんでるみたいだから、しばらくそういうことにしといてもいっかぁ…。
◇
豪華な夕飯もあっという間に終わり、残すはケーキのみ。
お母さんはケーキを取りにキッチンに向かった。
今年は何ケーキだろ…?
去年はチョコレートだったなぁ…。
ケーキに想いを巡らせていると…
「陽菜」
お母さんが戻ってきていた。
「あ、お母さん。今年は何ケーキ…」
お母さんに視線を向けたと同時に、あたしは言葉を失った。
お母さんが手にしていたのはケーキではなく、空色の封筒だった。
「なに、それ…」
「晴樹からよ」
「え…」
晴にいちゃんから…?
「事故に遭う、一週間くらい前かしら…。晴樹が預かってくれって言ってきたのよ。陽菜が今の自分と同い年になったら渡してくれって。照れ臭かったみたいよ…」
そう言うお母さんは遠い目をしていた。
「晴樹が死んでから、いつ渡そうか考えたわ。晴樹の事故を自分のせいにして悩むあんたを見て、何度渡そうとしたことか。でも、晴樹との約束通り、陽菜が17歳になるまで待つことにしたの」
「お母さん…」
「17歳の誕生日、おめでとう。それは晴樹からのプレゼント」
「…っ」
「ケーキ持ってくるから、待ってなさい」
そう言うと、お母さんは部屋から出ていった。
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